薬物問題に対する日本の取り組みは、欧米に比べ20年以上遅れているといわれ、さらには民間の薬物問題に関する社会資源の絶対的な不足は アジアでも最低レベルにあります。日本は犯罪として取り締まることに力点を起きすぎた結果、薬物依存からの回復・社会復帰というアフターケアに ついてはまったくといっていいほど取り組まれてきませんでした。
一方、欧米では、薬物使用の重罰化が問題の抑止にはならず、むしろ法的抑制の強化がブラックマーケットを肥大化させるという現実的な反省から、 「処罰よりも治療」を優先する流れが主流になっています。
薬物事犯の初犯者は、自己使用事犯の場合、ほとんどの場合、執行猶予の付いた判決になります。
つまり、覚せい剤事犯者の再犯率は50%前後と極めて高いにもかかわらず、 再犯防止に向けた取り組みが何もなされないまま、多くの薬物事犯者は元の薬物が身近にある生活に戻るわけです。
かといって執行猶予の判決後に薬物問題の専門機関に行くことを義務づけることはできません。 そのため、執行猶予期間中に再犯を犯して実刑判決を受けたり、依存症に陥って、精神病院の入退院を繰り返すといった悲劇も数多く見られています。また、中には保釈中にさらに薬を使ってしまう人もいます。
薬物乱用者に対する初期介入は非常に難しいことで知られています。誰もが最初は簡単に薬を止められると思っています。 そして、体がボロボロになり、仕事も家族も失ってから、初めてリハビリの専門機関につながるのです。
むしろ、薬物乱用者本人にとって、逮捕・起訴というのは薬物を止める絶好の機会であるにもかかわらず、現在まで何の取り組みみなされていないのです。
そこで、APARIは保釈期間中に、薬物事犯で逮捕・起訴された刑事被告人に対する薬物研修プログラムを開始しました。
刑事訴訟法93条3項が、保釈に際し、「被告人の住居を制限しその他適当と思われる条件を付することができる」としていることから APARIの施設で薬物研修を受けることを条件に保釈決定を得ることができれば、否応無しに被告人は再犯防止に向けたプログラムを受けることができるのです。つまり,保釈期間中が、年間約3万人の薬物事犯の検挙者への、再犯防止に向けた薬物研修をする唯一のチャンスなのです。